認知症を勉強しましょう

痴呆から認知症へ

痴呆という言葉からはマイナスなイメージが感じられるため、国民レベルでの新しい用語の検討が行われ、

16年より「痴呆」という名称は「認知症」に変更になりました。

認知症とは

成人に起こる記憶と知能の障害をいいます。認知、記憶、判断、言語、感情、性格などの種々な精神機能が

進行性に減退、または消失し、日常生活や社会生活を営めなくなった状態をいいます。

認知症の考え方

         


認知症の原因(種類)

50%がアルツハイマー型認知症、約30%が血管性認知症、そして残りの20%はレビー小体型認知症、前頭側

頭型認知症など種々の認知性疾患が含まれます。また甲状腺機能低下症、ビタミンB1・B12欠乏、脳炎、正常

水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍などでも認知症の症状が起こりますが、治療によって認知機能が改善する可能

性があります。

     

認知症の症状

中核症状周辺症状の2つに分けられます。

1)中核症状:思考・推理・判断・適応・問題解決などの障害からくる症状です。

  ♦記憶障害、判断力低下、見当識障害、言語障害(失語)、失行、失認など

2)周辺症状:知的能力が低下するため、二次的に起こるものです。

  ♦精神症状:せんもう、抑うつ、興奮、睡眠障害、妄想、幻覚、不安、焦燥など

  ♦問題行動:暴言、暴力、攻撃、喚声、徘徊、性的抑制欠如、ののしり、過食、異食など

アルツハイマー病について

認知症の原因の50%以上を占めるアルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)についてポイントをお話しま

す。

1)早期発見・早期診断・早期治療が重要です:“家族の気付き”がとても重要になります。

発症時期は明確でなく、徐々に進行していくのが特徴です。初期は健忘期です。“物忘れ”“置忘れ”“しまい

忘れ”“約束を忘れる”ことが多くなります。衣服の着脱、排泄、入浴、移動、食事などの基本的な生活動作

は保持されますが、食事をしたことを忘れて何回も要求したり、繰り返し同じことをしゃべる傾向にあります。

2)現段階では根治的な治療法はありませんが、中核症状である記憶・認知障害に対して塩酸ドネペジルは効果

があります。この薬剤の期待すべき効果は、短期間の改善効果よりもむしろ長期間の進行抑制効果にあります。

3)多くの疫学研究からADなどの認知症の予防因子として運動が挙げられています:身体活動の低さはADの

危険因子として指摘され、逆に熟年期の身体活動の高さはADに対して防御的であるという知見もあります。

4)MRIによる形態診断は主に除外診断として重要であり、SPECTによる脳血流シンチは機能診断として

有用です。そして現在、画像診断法として最も注目を浴びているのがPETによるアミロイドイメージング

す。これは脳内のアミロイドβ蛋白の蓄積を見ることができる技法であり、ADの早期診断、初期診断にとて

も有用です。

5)ADの診断マーカー:髄液中のリン酸タウ蛋白が最も信頼度が高く、今後血液サンプルによる測定法が期待

されています。

6)ADではアミロイドβ蛋白が凝集して不溶性の線維形成がなされてアミロイドとなり脳に沈着し、老人斑を

形成します。このアミロイドβ蛋白に対する様々な治療法の開発が進められています。

最後にひとこと

今回は認知症の大まかな全体像をお話しました。

♦認知症は“単なる老化ではなく、病気である”ことを知ってください。

♦本人がこれまで築き上げた大事なものが少しずつ失われていきます。家族や周囲の多くの人々の支えが必要で

す。かかりつけ医、サポート医、専門医と地域包括支援センターとの連携によって診断、治療、相談、支援、

介護が行われていきますので、家族だけで悩まないように様々な“相談窓口”を利用しましょう。