子宮頚がんについて

最初に子宮頚がんの現状について

子宮頚がんは婦人科領域のがんの中では乳がんに次いで多く、年間約15000人が発症して

いると報告されています。とりわけ2030代の若い世代の子宮がんの発症率が急増してお

り、“マザーキラー”といわれています。

子宮頚がんの原因は

子宮頚がんはヒトパピローマウィルス(human papilloma virusHPV)の感染が主要な

原因であることがわかっています。HPVは約120種類以上の遺伝子型が知られており、

高リスク、中間リスク、低リスクに分類されています。

子宮頚がんはこの高リスクのHPVに感染すると前がん病変(異形成)が生じ、10年以上

(長期間の持続感染)経過して浸潤がんになります。

10代女性の性行動の変化

2000年の全国調査によると、1619才に性交を開始したのは、55才以上では10.7%であ

るのに対して1824才では79.2%となっており、性交開始年令が若年化しています。また

パートナーが1人の場合にはコンドーム使用率が50%であるのに対して、パートナーが増

えるほどリスクが増えるにもかかわらず、パートナーが4人以上では男女とも20%まで下

がっています。

高リスクHPV陽性率

HPVは性交渉によって感染します。性交渉経験者の5080%は少なくとも1度はHPV

感染していると考えられています。しかしながら高リスクHPVに感染しても大部分の感染

は一時的で、免疫力によって自然消滅します。そして一部のHPV感染が消失せずに長期間

の持続感染によってがんが発症することになります。

がんを予防するワクチン

♦現在、HPV16型・18型に対するワクチン(サーバリックス)と16型・18型に尖形コ

ンジローマの原因ウィルスの6型・11型を加えたワクチン(ガーダシル)の2種類が開発

されました。

♦このワクチンはHPV16型・18型に起因する前がん病変の発症をほぼ100%予防すること

ができ、すでに世界の多くの国では公費負担や補助で実施されています。

♦接種対象:10才以上の女性:性体験前の若い女性に接種することが最も効果的ですが、既

に性交渉の経験がある女性(〜26才)も接種対象となります。

♦用法・用量:10.5mlの上腕筋肉内注射。初回より1ヵ月後と6ヵ月後の3回接種。

接種できる医療機関:婦人科、内科、小児科で接種することができます。成人女性の場合

は婦人科で検診と組み合わせてワクチン接種することをお勧めします。小児の場合は内科、

小児科で通常の予防接種のようにワクチン接種を受けることができます。

最後に一言

♦ワクチンはHPV16型・18型に対する感染予防であり、治療薬ではありません

♦ワクチンは定期検診に取って代わるものではありません。

ワクチンによる感染予防 + 定期検診 がこれからのスタンダードになります。

♦欧米諸国の検診率が80%以上であるのに対して日本では20%台の低率であり、さらに多

くの欧米諸国がワクチン接種を全額公費負担しているのに対して日本では高額な自費であ

ることの差はとても大きく、残念に思います。

 

(※上記の図・表・統計は日医雑誌 138巻・第5号、Medical ASAHI 2009 Dec

  グラクソ・スミスクライン株式会社サーバリックス資料より引用しました)